関西関節鏡・膝研究会誌ーOnline Journal
会長挨拶 本研究会について 役員名簿 入会案内
Top Page
研究会誌投稿規定 研究会のお知らせ 関連学会・研究会のご案内
関西関節鏡・膝研究会誌 2015 Vol.27 No.1
小侵襲BTBグラフト採取によるACL再建術の術後成績の検討
 目的
 膝蓋大腿(以下PF)関節に生じた離断性骨軟骨炎(以下OCD)の2例を経験したので報告する。
 症例1
   16歳男性、主訴は右膝痛。数年前より運動中に右膝痛を自覚するも放置していた。バスケットの練習中 に右膝に激痛を生じ歩行困難となり、前医にて右膝関節内遊離体を指摘され当科受診した。スポーツ歴として小学時代よりバスケットボールを継続している。理学所見では、右膝に腫脹、膝蓋跳動は認めず、膝可動域は伸展-5°から屈曲135°と軽度伸展制限を認め、Patellar compression test、grind testは陰性であった。単純X線上、PF関節部に遊離骨片を認めた。単純CT上、遊離骨片と大腿骨外側顆に骨欠損を認め、MRI上、大腿骨外側顆関節面に骨軟骨欠損を認め(図1)、右大腿骨外側顆OCDと診断し手術を施行した。

 関節鏡所見では顆間窩に遊離骨軟骨片が浮遊し、大腿骨外側顆に約20 X 10mm大の骨軟骨欠損を認めICRS OCD分類Ⅳとし、外側アプローチにて病変部を露出すると骨軟骨欠損部は血塊、瘢痕で被覆されており、遊離骨軟骨片を摘出、硝子軟骨面は良好に残存しており、母床を新鮮化し、骨軟骨片を形成、整復し、吸収ピン2本で固定し、固定性は良好であった。術後はニーブレイス固定とし、術後1週より1/3部分荷重歩行訓練を、術後2週より膝可動域訓練を開始し、術後6週より全荷重を許可、スポーツ復帰は術後3か月より許可した。術後6か月の現在、CT、MRI上、骨癒合と軟骨面の連続性は良好で(図2)、右膝痛、膝可動域制限なくバスケットボールに復帰している。
図1 CT上、遊離骨片と大腿骨外側顆に骨欠損を、MRI上、大腿骨外側顆関節面に骨軟骨欠損を認めた
図2 術後6か月時CT、MRI上、骨癒合と軟骨面の連続性は良好であった
※上記画像をクリックすると拡大表示されます。
 症例2
   19歳男性、主訴は右膝痛と腫脹。3年前よりテニスプレー中の右膝痛を自覚、運動翌日に右膝腫脹し、前医を受診、画像上、右膝蓋骨OCDを指摘され当科受診した。スポーツ歴として中学時代よりソフトテニスを継続している。理学所見では、右膝に腫脹、膝蓋跳動を認め、膝可動域は伸展-10°から屈曲130°と軽度伸展制限を認め、Patellar compression test、grind testは陽性であった。単純X線上、膝蓋骨PF関節面に骨欠損と剥離骨片を認めた。単純CT上、膝蓋骨内側関節面から中心陵にかけて約15 X 15mm大の骨欠損を認め、MRI上、膝蓋骨関節面に骨軟骨欠損と剥離骨軟骨片を認め(図3上段)、膝蓋骨OCDと診断し手術を施行した。

 関節鏡所見では、膝蓋骨から剥離した軟骨面と、病変部から瘢痕組織の形成を認め、ICRS OCD分類Ⅲとし(図3下段 左)、外側アプローチにて膝蓋骨を反転させると、内側関節面病変部よりフラップ状の瘢痕組織の形成を認め、剥離軟骨面と瘢痕組織は連続していた(図3下段 右)。病変部には脆弱な壊死組織を認め、中心陵軟骨面も不安定であったため、中心陵を含めて母床を新鮮化、大腿骨外側顆より2本の骨軟骨柱を移植し、吸収ピン2本で補強した(図4 上段)。術後はニーブレイス固定とし、術翌日より膝可動域訓練、術後2日より1/3部分荷重歩行訓練を開始し、術後2週より全荷重を許可、スポーツ復帰は術後3か月より許可した。術後6か月の現在、画像上、骨癒合は良好で(図4下段)、右膝痛なくスポーツ復帰しているが運動後に軽度膝水腫を認めている。  
図3 上段:MRI上、膝蓋骨関節面に骨軟骨欠損と剥離骨軟骨片を認めた

下段 左:関節鏡所見では、膝蓋骨から剥離した軟骨面を認め、ICRS OCD分類Ⅲとした

右:術中所見では、膝蓋骨内側関節面病変部よりフラップ状の瘢痕組織の形成を認めた
図4 上段:病変部には脆弱な壊死組織を認め、中心陵軟骨面も不安定であったため、中心陵を含めて母床を新鮮化、大腿骨外側顆より2本の骨軟骨柱を移植し、吸収ピン2本で補強した

下段:術後6か月時CT、MRI上、骨癒合は良好であった
※上記画像をクリックすると拡大表示されます。
 考察
   PF関節に生じるOCDの頻度は非常にまれで全体の1%以下と言われ、膝蓋骨側はRomboldが最初に報告し1)、1%以下や2%、大腿骨側はAxhauzenが最初に報告し2)、Aichrothは2%と報告している3)。病変部の局在には膝屈曲時のPF関節接触面や圧が関与すると言われ、膝蓋骨側では末梢1/2に最も多く、Choiらは全18例が末梢中央で中心陵にかかる病変であったと報告し4)、大腿骨側では外側に多いと報告されている。病因では外傷、虚血性壊死、骨化障害、性差、遺伝などと関連があると言われ、高橋らはバスケットボール歴5年間の15歳男児の両側大腿骨滑車部OCD手術例を報告し、繰り返す微小な外傷が重要な要素であると述べている5)。手術適応はスポーツ活動の中止や安静などの保存療法に抵抗する場合や、有症状病変、関節内遊離体、軟骨下硬化像、骨軟骨片の部分または完全剥離を認める場合で手術療法を選択する。手術療法には順行性、逆行性骨穿孔術、骨軟骨片摘出術、吸収ピン、ヘッドレススクリュー、骨釘などを用いた骨軟骨片固定術、骨軟骨柱移植術、自家培養軟骨移植術などがあり、良好な成績が報告されているが、病期、関節鏡所見(ICRS OCD分類)に応じた術式の選択が必要であり、特に、ICRS OCD分類Ⅲ、Ⅳでは骨軟骨片の完全剥離や転位を認め、骨軟骨片固定術、骨軟骨柱移植術、培養軟骨移植術などが選択されるが、いずれの術式でもPF関節面の形状の再建が重要となる。症例2では、膝蓋骨中心陵に及ぶ病変を認め、2本の骨軟骨柱を移植、軟骨面をメスで形成し、中心陵関節軟骨面をできるだけ再建し、術後疼痛はないが、運動後に軽度膝水腫を認め、膝蓋骨中心陵を含む病変では関節軟骨面の完全な再建は困難で、またPF関節は非荷重関節のため症状が軽度のまま病期が進行する可能性もあり、早期診断と手術時期が重要である。
この症例では、反対側に同様に膝蓋骨OCDを認め、現時点ではMRIで軟骨面剥離はなく、症状は軽微な疼痛と水腫のみであるが、病期が進行する前に早期の手術が望ましいと思われる。
 まとめ
 PF関節に生じたOCDの2例を経験した。治療には病期と関節鏡所見に応じた術式の選択と、PF関節面の形状の再建、早期の診断と手術時期が重要と思われる。
 参考文献
1) Rombold C. Osteochondritis dissecans of the patella: a case report. J Bone Joint Surg Am 1936; 18: 230-1.
2) Axhausen G. Die Entstehung der Freien Gelenkkorper und Ihre Beziehungen. Arch F Klin Chir 1912; 104: 581-678.
3) Aichroth P. Osteochondritis dissecans of the knee. A clinical survey. J Bone Joint Surg Br 1971; 53: 440-7.
4) Choi YS, Cohen NA, Mints DN, et al. Magnetic resonance imaging in the evaluation of osteochondritis dissecans of the patella. Skeletal Radiol 2007; 36: 929-35.
5) Takahashi Y, Nawata K, Tanaka H, et al. Bilateral osteochondritis dissecans of the lateral trochlea of the femur: a case report. Arch Orthop Traume Surg 2008; 128: 469-72.
Key words: osteochondritis dissecans
Key words: patella
Key words: lateral femoral condyle

Copyright 2003 Kansai Artroscopy and Knee Society