関西関節鏡・膝研究会誌ーOnline Journal
会長挨拶 本研究会について 役員名簿 入会案内
Top Page
研究会誌投稿規定 研究会のお知らせ 関連学会・研究会のご案内
関西関節鏡・膝研究会誌 2014 Vol.26 No.1
外側半月板切除後の外反変形を伴う膝関節症に対し、半月板再建術と遠位大腿骨骨切り術を行った1例
 はじめに
膝関節半月板には荷重伝達、衝撃吸収、潤滑、関節安定性などの機能があり1)、半月板切除術後の半月板機能の喪失、低下に伴う変形性膝関節症の発生は数多く指摘されている2)。今回、格闘技選手の外側半月板切除後の外反変形を伴った膝関節症に対し、自家腱を用いた半月板再建術と遠位大腿骨骨切り術を行った。
 症 例
症例は34歳男性、左膝痛。スポーツは格闘技をしており、さらに指導も行っていた。14年前に左膝外側半月板切除術を受けている。5年程前から徐々に左膝痛が増強し、保存的加療を長年行うも、症状の軽快ないため、当科紹介となった。理学所見では可動域は-5°から130°に制限され、外側関節裂隙、大腿骨外顆、脛骨外顆に圧痛を認めた。Rosenberg撮影では左膝外側関節裂隙は完全に消失し、骨棘形成を認めた(図1)。片脚立位正面像でFemorotibial angle (FTA)は173°(健側177°)と健側と比較し、外反変形を呈していた。MRIでは外側荷重部中心に関節症変化を認め、半月板はほぼ消失し、骨挫傷様変化も認めていた(図2)。
図1 ローゼンバーグ撮影にて左膝外側関節裂隙は消失している
図2 MRIでは外側荷重部中心に関節症変化を認め、半月板はほぼ消失し(A)、骨挫傷様変化も認めていた(B)
※上記画像をクリックすると拡大表示されます。
 手術所見
  関節鏡視下に観察すると、外側半月板は中、後節でほぼ消失しており、荷重部軟骨は広範囲に全層欠損していた。外側半月板の再建は堀部の報告3)に従い、pull-out固定のための骨孔を作成し、ST腱をinside-out法にて縫合した。広範囲軟骨欠損と骨棘に対し、abrasion arthroplasty、microfractureと、骨棘切除も行った。その後、closing wedge遠位大腿骨骨切り術を行った。術後FTAは180°とした。
 経過
術後4週間は非荷重とし、その後全荷重、順次可動域訓練を始め、術後3ヶ月でランニングを開始した。術後4ヶ月でダッシュを開始した。現在、術後6ヶ月であり、Rosenberg撮影では外側関節裂隙の開大を認め(図3)、MRIではサイズは小さいものの、半月板様組織が確認でき、また、骨硬化が起こっていた荷重部軟骨下骨の状態も改善していた(図4)。スポーツ復帰は術前の70%ほどのレベルで復帰しており、Lysholm scoreは術前58点が現在84点まで改善している。
図3 術後6ヶ月でのローゼンバーグ撮影において左膝関節裂隙が開大している
図4 術後6ヶ月MRI
術前に見られていた荷重部軟骨下骨の異常信号も改善しており(A)、サイズは小さいものの半月板様組織が確認できた(B)
※上記画像をクリックすると拡大表示されます。
 考察
  半月板切除後の合併症として、急速軟骨破壊や高度関節症性変化が起こり得ることがよく知られているが2,4)、これらが起こると治療に難渋することが多い。消失した半月板機能を再現する解決策として、自家ST腱を用いた再建術があり、半月板切除後に同時再建をした再鏡視において、関節軟骨の悪化をきたした症例は少く、再建半月板はある程度の半月板機能を有すると報告されている3)。しかし、変形性膝関節症を有する例に対して自家ST腱を使用した再建術を行った例に関しては、堀部らは明らかに移植腱の状態は不良であると報告している3)。また、Johnsonらも成績不良であり、推奨しないとし、その原因としてアライメント不良を挙げている5)。そこで、当科では変形性関節症を伴った外反変形膝に対する半月板再建術の成績改善目的で、変形矯正を行う内側closed wedge遠位大腿骨骨切り術を行った。術後1年未満の短期経過観察のみであること、半月板再建・矯正骨切り術式の最適化などが今後の問題点と課題であるが、半月板再建術と遠位大腿骨骨切り術の併用は外側半月板切除後の外反変形を伴った膝関節症に対する治療方法の1つになる可能性がある.
 まとめ
  半月板再建術と遠位大腿骨骨切りは、外側半月板切除後の外反変形を伴う膝関節症に対する治療方法の1つになる可能性がある.
 参考文献
1) Messner K, Gao J: The menisci of the knee joint. Anatomical and functional characteristics, and a rationale for clinical treatment. J Anat 1998;193:161-178.
2) 王寺享弘:膝関節半月板切除後の早期に発症する軟骨病変. Bone Joint Nerve 2014;vol4: 99-108.
3) 堀部秀二:自家半腱様筋腱による半月板機能再建術. 膝関節鏡下手術 文光堂2010;319-325.
4) Ishida K, Kuroda R, Sakai H. et al. :Rapid chondrolysis after arthroscopic partial lateral meniscectomy in athletes: a case report.Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc. 2006;14:1266-1269.
5) Johnson LL, Feagin JA Jr: Autogenous tendon graft substitution for absent knee joint meniscus: a pilot study. Arthroscopy. 2000;16:191-196.
Key words: Lateral meniscectomy
Key words: Femoral osteotomy
Key words: Valgus deformity

Copyright 2003 Kansai Artroscopy and Knee Society