関西関節鏡・膝研究会誌ーOnline Journal
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関西関節鏡・膝研究会誌 2008 Vol.20 No.1
7歳男児に生じた膝複合靭帯実質部損傷の1例
土田真嗣,立入久和,寺内 竜,南 銀次郎,河野  茂,松尾健志,原 邦夫
 はじめに
 小児の外傷性膝疾患で靱帯実質部損傷を認めることはまれである。7歳男児に生じた膝複合靱帯実質部損傷の1例を報告する。
 症 例
患者
  7歳の男子
現病歴
  トランポリンの着地で右膝関節を過伸展し、右膝関節部痛を自覚した。近医でシーネ固定をうけ、1週間後に当科を紹介され初診した。

理学所見

  Lachman test,pivot-shift test, anterior drawer testはいずれも陽性で、end-pointは消失していた。またposterior drawer testも陽性でend-pointは消失していた。しかし、内外反の動揺性はなく、McMurry testも陰性で、神経血管損傷は認めなかった。
画像所見
  初診時の単純X線像(図1)で骨端線損傷および裂離骨折はなかった。MR画像(図2)ではACL・PCLの連続性は消失し、後方の支持組織の損傷により下腿後方への血腫の漏出と思われる高信号域を認めたが、単純X線像と同様に付着部での骨症はなかった。また明らかな半月板および側腹靱帯損傷はなかった。
診断
  以上より、右膝複合靱帯実質部損傷(ACL・PCL損傷)と診断した。
後療法と経過
  本症例は10歳未満の小児であり、手術療法による成長障害を危惧し、まず保存療法を選択した。30°屈曲位でのギプス固定および免荷を3週間行った後、硬性装具下の可動域訓練伸展0°、屈曲120°)を開始した。4週後に全荷重を許可し、3ヵ月後から支柱付き軟性装具着用下に可動域制限を解除し、6ヵ月後にジョギングを許可した。受傷後1年を経過した頃から、徒手検査でend-pointを認め、MR画像でもACLの連続性を認めるようになった(図3)。現在、受傷後2年で、後方への動揺性は残存しているが、前方への動揺性は改善しており、脚長差、過伸展、可動域制限、膝関節部痛はなく、軟性装具着用下に体育活動を許可している。
図2
図3
 考 察
 10歳未満の小児における膝複合靱帯損傷は渉猟しえた範囲内では3例(表1)とまれであり、いずれも骨症を伴っている。本症例のようにACLとPCLの同時実質部損傷の報告はなく、極めてまれであると考える。小児のACL損傷に対する手術療法では骨端線を損傷することによる成長障害が報告されている1)。最近では骨端線を温存する手術方法も散見される2,3)が、一定の成績は得られておらず本例では保存療法を選択した。小児ではACLの実質部損傷は比較的まれであり4)、脛骨側での裂離骨折が多いと報告されている5)。本例では保存療法の経過中に、ACLの機能回復傾向を認め、脛骨側付着部での実質部損傷の可能性を考えた。現在では軟性装具着用下の体育活動を許可しているが、小児のACL損傷についても半月板損傷を合併する報告も散見され、今後も慎重な経過観察が必要である。
表:10歳未満の膝複合靱帯損傷の例
表1「10歳未満の膝複合靱帯損傷の例」
 まとめ
1) 7歳男児に生じた膝複合靱帯実質部損傷の1例に対し、保存療法を行った。
2) 小児ではACL実質部損傷でも脛骨側の損傷においては機能回復する可能性があると考えた。
3) 経時的にACL機能の回復傾向を認めるが、今後も慎重な経過観察が必要である。
 参考文献
1) Behr CT, Potter HG, et al. The relationship of the femoral origin of the anterior cruciate ligament and the distal femoral physeal plate in the skeletally immature knee. An anatomic study. Am J Sports Med.2001; 29: 781-7
2) Anderson F. Transepiphyseal replacement of the anterior cruciate ligament in skeletally immature patients. A preliminary report. J Bone Joint Surg Am.2003 ; 85: 1255-63
3) Guzzanti V, Falciglia F, et al. Physeal-sparing intraarticular anterior cruciate ligament reconstruction in preadolescents. : Am J Sports Med.2003; 31: 949-53
4) DeLee JC, Curtis R. Anterior cruciate ligament insufficiency in children. Clin Orthop Relat Res. 1983; 172: 112-8
5) McLennan JG. Lessons learned after second-look arthroscopy in type III fractures of the tibial spine.J Pediatr Orthop.1995; 15: 59-62
Key words: knee ligament injury, conservative treatment, adolescent

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