関西関節鏡・膝研究会誌ーOnline Journal
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 はじめに
 膝蓋骨骨軟骨病変に対する自家骨軟骨移植は,これまでHangodyらにより8症例1),またGobelらにより5症例2)の結果が報告され,いずれも良好な臨床成績が示されている.本研究では,膝蓋骨骨軟骨病変に対し自家骨軟骨移植を行った2症例の短期成績(自覚評価および,画像所見,再鏡視像)を検討した.
 症 例
症例1:51歳男性.主訴は,右膝内側部痛.
現病歴:平成9年から誘因なく,右膝蓋骨内側部に運動時痛出現.近医にて精査したが原因不詳,平成12年6月当科外来を受診した.階段昇降時,走行時に症状が増強する.
既往歴:特記すべきことなし.
理学所見:可動域は,full rangeで,Patellar Crepitusは陽性であった.Apprehension sign,膝蓋跳動,前方後方,側方動揺性は,いずれも陰性であった.
画像所見:MRIにてT1強調像で膝蓋骨軟骨の不整像および,軟骨下骨にT1強調像でlow,T2強調像でhighな変化を認めた.
関節鏡:軟骨病巣部はfibrilationが認められ,probingで軟骨下骨に至るIV度損傷であった.
病巣部は9mm×9mmで,同部位を掻爬し大腿骨非荷重部より採取した骨軟骨を,osteochondral autograft transfer system(以下OATS)を用いてpress fitにて移植を行った(図1).
術後経過:後療法は術後2週間を免荷とし,3週目から部分荷重と可動域訓練を始めた.5週目から全荷重とした.術前の痛みは消失したものの,術後3ヵ月から膝屈曲90°前後で膝蓋骨外側にcrepitusを生じ,痛みを伴った.MRIでは,移植部の軟骨は,隣接する軟骨に対して菲薄であったが,連続性は認めた.骨髄内はDonor site,recipient siteともにT1 low T2 highな像を呈した.
再鏡視像(術後9ヵ月)probing上,移植軟骨の硬度は正常様であった.しかし,graft境界部は,probingで容易に陥凹し,また同部でのfibrilation形成を認めた.donor siteでは陥凹が残存し,同部の修復は不完全であった(図2).
   
 
症例2:33歳男性,主訴は右膝痛.プロスキー選手.
現病歴:平成7年頃から右膝屈曲時で落痛出現し,平成12年になり落痛増強してきた.スキー時,低姿勢でターンするときに症状増強し,階段昇降時にも右膝痛が出現するようになった.
既往歴:16年前に右膝蓋骨骨折にてギプス固定を行った.
理学所見:症例1と同様,Patellar Crepitusのみ陽性であった.
画像所見:MRIにて症例1と同様に,T1強調像で膝蓋骨軟骨の不整像,および軟骨下骨にTl強調像でlow,T2強調像でhighな変化を認めた.
関節鏡:症例1と同様にIV度軟骨損傷を認めた.病巣部は12mm×15mmであり,同部位を掻爬し大腿骨非荷重部より採取した6mm,7mm,9mmの骨軟骨を,OATSを用いてpress fitにて移植を行った.術後の後療法は,症例1と同様に行った(図3).
術後経過:術後の後療法は,症例1と同様に行った.術前の痛みは消失したものの,術後3ヵ月から膝屈伸時に膝蓋骨外側にcrepitusを生じ,痛みを伴った.MRIでは,移植軟骨は隣接軟骨に比べて菲薄であるが,骨髄は隣接骨髄とintensityは同等であり,その境界は不鮮明であった.
再鏡視像(術後6ヵ月)probing上,移植軟骨の硬度は正常様であった.しかし,辺縁部は膨化しており,周辺組織との境界部は,probingにより容易に陥凹した.donor siteは陥凹が残存し,血行を伴う組織で被覆されていた.また,採取部と採取部の間には連続した1本のfissureが確認され,近位の採取部外側には骨棘の形成を見た(図4).
   
   
 考 察
膝蓋骨骨軟骨損傷に対するモザイクプラスティーの成績は,大腿骨穎部に対する成績よりも劣るものの,良好な臨床成績を得ている.今回,我々が経験した2例も,両例とも除痛効果を中心に,良好な自覚評価を得たが,その再鏡視像は,recipient site,donor siteともに問題点が認められた.
Recipient siteの問題としては,両例ともに移植軟骨と隣接軟骨間の修復が不十分であった.今回の2症例とも骨軟骨移植部が膝蓋骨中央部であったために,膝屈伸時に大腿骨との問で,shear stressが増大し,修復不良となった可能性が考えられる.
Donor siteの問題として,不十分な修復,軟骨損傷や骨棘の形成が確認された.これまで,donor siteは修復されるという報告1,3)が散見されるが,それらのケースは,サイズが直径4.5mmと小さいものが多かった.本症例では6mm以上(6mm,7mm,9mm)と過去の報告に比して大きく,そのサイズの大きさが修復不良の一因となったと考えられる.また,軟骨損傷と骨棘を認めた症例2はプロスキー選手で,活動レベルの高い症例であった.そのために,特に活動性の高い症例では,同部に多彩な病的変化を起こす危険性があり,本術式の選択にあたっては,患者の活動性も配慮する必要があろう.
 まとめ
 膝蓋骨骨軟骨病変に対する自家骨軟骨移植2例は,両例とも除痛効果を中心に,良好な自覚評価を得た.しかし,resipient siteにおける隣接組織とのintegration,およびdonor siteの修復は不十分であった.donor site周囲に軟骨損傷,骨棘形成を生じた症例もあり,術式の選択には,患者の活動性への配慮が必要であると考えられた.
 文 献
1) Laszlo Hangody., et al. : Mosaicplasty for treatment of articular cartilage defect : application in clinical practice. Orthopedics, 21 : 751-756, 1998.
2) Andreas Gobel : The autologous chondrocyte transplantation in retmpatellar cartilage lesions. Proceeding of the ISAKOS Congress, 5 : 68, 2001.
3) Matsusue, Y., et al. : Arthroscopic multiple osteochondral transplantation to chechondral defect in the knee associated with anterior cruciate ligament disruption. Arthroscopy, 9 : 318-321, 1993.
Key words:mtellar, mosaicplasty, donor site, recipient site

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