はじめに |
内側型膝関節症に対する脛骨高位骨切り術(以下HTO)は確立された術式とされているが,骨切り部の固定方法には様々な手法,材料が用いられている.当科においてプレートを用いたHTOの症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する. |
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症 例 |
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症例は男性3例3膝,女性1例1膝計4例4膝である.いずれも末期の内側型変形性膝関節症であり,平均経過観察期間は1年1ヵ月であった. |
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術 式 |
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手術は全例スルザー社製のHTO systemを用いて襖状骨切り術を行った.同システムは脛骨内側骨皮質を温存し,専用の圧迫機械で骨切り部を締結させてプレート固定する(図1).
なお,腓骨の処理は腓骨中央部で約1cm骨切除を行った.
なお,腓骨の処理は腓骨中央部で約1cm骨切除を行った. |
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後療法 |
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後療法は,ギプス固定は行わず,術翌日から可動域訓練,大腿4頭筋訓練を開始し,3週間で部分荷重,6週で全荷重を開始した |
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結 果 |
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術後成績は日本整形外科学会評価点数(以下JOAスコア)にて評価した.その結果,痔痛:歩行能,痔痛:階段の項目が有意に改善し合計点数でも術前平均55.2点が術後平均83.7点と有意に改善した.また可動域は,術後も充分に保たれていた. |
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FTAの変化は,術前平均183.プが術直後は168.6°となり最終検診時は平均171.2°と経過観察期間を通じて,安定していた(表1).合併症としては,浅腓骨神経麻癖が一例生じたが,改善傾向にあった.また全例骨癒合が得られた. |
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症例1:69歳男性 |
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内側型変形性膝関節症で術前FTAは183°,JOAスコアは45点であった.16°の骨切りを行い,術後1年ではFTAは168°,JOAスコアは85点と改善が得られた. |
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特にこの症例は術前膝屈曲110°で激しい落痛を有したが,術後は屈曲が150°まで改善し,疹痛もほぼ消失した(図2). |
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症例2:70歳男性 |
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約9ヵ月前にACL再建術(自家屈筋腱5重折,エンドボタン,ポストスクリュー使用)を受けたが疹痛,関節水腫(毎週約60ML貯留)が持続した.大腿骨内課荷重面に骨壊死と思われる所見が次第に顕著となり,HTOを施行した.18°の骨切りを行いFTAは術前189°から術後一年で172°,JOAスコアは術前75点から術後95点まで改善した.この症例では,手術中に脛骨内側骨皮質が温存できず,この状態でプレート固定したためか脛骨遠位側がプレートに沿う形で固定され,内側骨皮質がずれた形になった(図3). |
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考 察 |
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HTOにおいて,プレート固定は他の方法に比べて手技が難しいとされているが一方,Hoffmann1)らはプレート固定は初期固定力が優れているとしている. |
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今回用いたHTOシステムは専用骨切りJIGと圧迫機械の使用で手技を簡便化し脛骨内側骨皮質を温存する事でより安定した固定が得られる設計である.李4)らが述べたように当科でも後療法を比較的速やかに行う事ができた. |
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今次に脛骨内側骨皮質が温存できなかった症例を経験した.小林2)らは脛骨内側骨皮質が温存できないと骨切り部が不安定となり矯正不足になると述べている.また,大槻3)らは骨切り角度が大きくなると(16°から18°以上)脛骨内側骨皮質が温存できない場合が多くなるとしている.当科でも18°骨切りした2例で脛骨内側骨皮質が温存できなかった.結果として遠位側がプレートに引き寄せられる形となった.脛骨内側骨皮質が温存するために,大槻らは骨切り部の圧迫に際し充分に時間を掛けてゆっくり行い,また脛骨内側骨皮質にキルシュナー鋼線で数力所穿孔しておく方法を勧めている.当科では,プレート固定で内側骨皮質のずれを極力防ぐためには彎曲の異なる数種類のプレートを用意し,骨切り部の形状により良く適合するプレートを選択して使用することを今後検討している. |
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まとめ |
1. |
プレートと専用Jigを用いた,高位脛骨骨切り術を行った. |
2. |
JOAスコア等,良好な成績が得られた. |
3. |
本術式は,後療法短縮の点から有用な術式と考えられた. |
4. |
骨切り角度が大きい場合は,脛骨内側骨皮質の温存が難しく今後,さらに術式の工夫が必要であると考えられた. |
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文 献 |
1) |
Hoffmann, A.A., etal. : High Tibial Osteotomy. Clin-Orthop., 271 : 212-217, 1991. |
2) |
小林 晶ほか:変形性膝関節症に対する高位脛骨骨切り術の問題点.
整形外科M00K, 29:218-229,1983. |
3) |
大槻康雄ほか:脛骨内側皮質を広範囲に温存した高位脛骨骨切り術の検討. 中部整災誌,41:293-294,1998. |
4) |
李 泰新ほか:高齢者に対する高位脛骨骨切り術の治療成績. 中部整災誌,44:193-194,2001. |
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Key words:high tibial osteotomy,
osteotomy jig, plate |
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